彼女は?

「通常の業務なら、それほど残業しないで出来るようになりました。あの日は、トラブルがあったからその書類作りで……」

 

「あれ、部をまたいでの仕事になったでしょう?上手くいってないの?第1と第3の人達と」

 

「……大丈夫です。二葉さん、御園さんとも上手くやってますよ」

 

「御園さんも総務から4月に異動になって半年?不慣れなことがあるかもしれないし。何かあったら、二葉さんに相談してね」

 

 

 

本当は少し大丈夫じゃなかった。

 

 

『貧乏くじを引かされたんですね』

 

 

あの日、鈴木さんに言われて意識してみると、御園さん、何かと私に仕事を押し付けてくるような気がする。

 

偶然かもしれないし、私の誤解かもしれないけど。

 

でも、今のところなんとかなるし、波風立てることもない。

 

すごく困ったら紗江先輩や二葉さんに相談しよう。

 

 

 

「その御園さん、鈴木さんとつきあってるって話、聞いたな」

 

「えっ?!そうなの」
御園さんは社内でも噂になるほどの華やかな美人。

 

私より2歳年上の、26歳だって聞いた。

 

流行の服。
いつも人気ブランドのバッグを持っていて(いくつ所有しているんだろう?)家がお金持ちらしい。

 

違う部署に移って、すぐに彼氏をゲットできるなんてすごいなぁ。

 

私なら業務に慣れるのに精一杯で、恋なんか出来ない。

 

あ、そういえば、鈴木さん、御園さんのご自宅が品川区だって知ってたな。

 

美男美女のカップルだ。

 

 

 

「私はその噂、信用してないけど…」

 

 

 

紗江先輩がパスタに目を落としながら言った。

 

 

 

「何でですか?」

 

「鈴木さんは3年前、横浜支社から移動してきたの。その時は彼女がいたのね。誰がアタックしてもダメでなほどで。その彼女と婚約もしたらしいんだけど……」

 

「ダメになっちゃったんですか?」

 

「そう。彩ちゃん達が入社するちょっと前ね。これ秘密じゃないから。みんな知ってるし」

 

「あ、その話、俺も聞いた」

 

「それ以来なのか、前からそうだったのか、女性に対して冷めている感じ?特に言い寄ってくる子には、まったくなびかないのよ」

 

結婚まで考えた人と別れるなんて。
辛い経験だよね。
冷たい横顔を思い出す。
女性に対してどんな思いでいるんだろう……

 

 

 

「あー、社長の息子説もあるよ、鈴木さん」

 

「はい?いくらうちの社長が『鈴木』だからって〜。総務にも『鈴木さん』いるよ?イチローだって鈴木さんだし、全国にもいっぱいだよ〜」

 

「ま、そうだけどさ。ウワサだよ」

 

 

 

な〜んかイマイチ中島君の話、信用できないなぁ。

 

 

 

「あ、でもこれは確実。あの人プロジェクトマネージャの資格持っている」

 

「プロジェクト?資格?」

 

 

 

キョトンとする私に紗江先輩は

 

 

 

「難易度の高い資格よ。もっと上の年齢の人が取ることが多いけど」

 

「そうなんですか?」

 

 

 

私が知りもしない難しそうな資格を持っているデキる男。

 

やっぱり凄いんだな、鈴木さん。
私といてイライラしただろうなぁと、ちょっと落ち込みながら、でもキッシュのランチプレートは堪能した。